前歯で食べ物を噛んでいたらガリッと音がして歯がぐらぐらして来たという患者さんが駆け込んでこられたのは去年の終わりの事でした。神経が無い歯で冠を被せてありました。根が折れてなければ良いのだけどと思いながらレントゲンを撮影したのですが、残念ながら折れてしまっていました。
神経を取った歯には根の中に土台を差し込んで上に冠を被せるのですが、丈夫な金属の土台をしっかりと入れてしまうと無理な力がかかった時に歯の根っこが折れてしまう場合があります。強度と弾力性を兼ね備えるグラスファイバーロッドで補強した土台を使う方法もありますが、残念ながら保険の適応になりません。
最近は保険の範囲内で作る場合でも私はできるだけ樹脂と柔らかい金属の組み合わせで土台を作るようにしています。強い力がかかると土台ごと脱離しますが、根っこは守られます。壊れるなら置き換えの可能な人工物が壊れて欲しいと思います。
この患者さんの場合は根っこが垂直に折れていましたので、抜歯するしかない状態でした。
抜歯した場合、選択肢は4つです。
1. 両隣の歯を削って冠を被せてブリッジにする
2. 両隣の歯にバネを掛けて取り外しの入れ歯にする
3. インプラント
4. 抜けたまま放置
患者さんとお話した結果、抜歯して同日にインプラントを植える事になりました。根っこが折れていましたのであまり時間的な猶予が無く、急遽、その翌週にインプラントの埋入をしました。
やや炎症があったので、念のために2ヶ月半待って仮の土台を立ち上げ、トータル3ヶ月と少しで処置を終了しました。術後の消毒やチェックを別にするとインプラントの部分の処置は6回で終了しました。
従来の方法では抜歯して3-6ヶ月待っていました。その間に骨が吸収してしまった場合には骨を作る手術をして
また6ヶ月程待ちます。ようやくインプラントを植えてもまた6ヶ月待っていました。外科処置だけでも3回以上は必要でした。

上顎の6本の前歯が写っていますが、向かって左側の二本は冠です。今回は患者さんのご希望で作り直しはしませんでした。中央の2本の歯と向かって左側の端の歯(糸切り歯)は天然歯です。インプラントはDentalの文字の"tal"の下あたりの歯です。冠が入っている向かって左側の二本よりもかえって自然な感じがしませんか?