●フロリダの空港で乗客の手荷物から人間の頭蓋骨
911のテロ以来、アメリカでは空港の手荷物検査がとても厳しくなっています。以前は金属探知機の検査さえ受ければ、自由に搭乗口まで到着する人を迎えに行けたのに、今では空港は厳戒態勢です。手荷物もいちいち厳しく検査をするようになりました。たまには空港でとんでもない物が見つかるようです。
フロリダ州のFort Lauderdale-Hollywood国際空港で乗客の手荷物検査係がバッグの中に人間のものと思われる頭蓋骨を見つけました。手荷物の持ち主は今週の木曜日にハイチから到着した女性です。女性は当局の事情聴取を受けていますが、逮捕されてはいないそうです。local6.comより
ハイチからというとブードゥー教の儀式にでも使うものなのでしょうか。
今は法律が厳しくなったので判りませんが、昔の歯学部の学生は人間の頭蓋骨標本を持っていたりしました。頭部はそれぞれの骨がややこしく立体パズルのように組み合わさっています。また、筋肉や神経の走行を覚えるのに、図を見るよりも実際の頭蓋骨を見ながら覚えると理解しやすいのです。傷や欠損の無い高級品は20万円以上しましたが、我々が持っていたのは5万円ぐらいのB級品だったと思います。頭の横の骨、側頭骨には茎状突起(styloid process)という尖った鉛筆のような細い骨が付いてい、これに茎状舌骨筋(stylohyoid muscle)、茎状舌筋(styloglossal muscle)、茎状咽頭筋(stylopharyngeal muscle)という3つの筋肉が付着しているのですが、(このへんが解剖学のヤマでした)安い頭蓋骨標本は大抵、この茎状突起が折れていました。
卒業してからは矯正の医局でレントゲンの読影の練習のため、頭蓋骨標本と観察しながらレントゲン写真のトレースをしていました。乾いた骨の手触りと防腐剤の匂いを思い出します。
ある日の深夜、誰もいない医局で反射を防ぐために部屋の明かりを消してシャーカステンの上に置いたレントゲンフィルムをトレースしていました。傍らに置いた頭蓋骨標本をあらためて見て、いったいこの頭蓋骨の持ち主はどんな人生を過ごしたんだろうと考えた事がありました。もちろん標本に聞いても答えてくれません。いつも見慣れた頭蓋骨が人間の一部だった事を強く意識した一瞬でした。
昔から、そして現在も医学の進歩や研鑽はどなたかの尊い犠牲の上に成り立つ部分が少なからずあります。決してその犠牲を無駄にしてはいけません。でも、頭蓋骨標本に関しては歯学部の学生の下宿が火事になって焼け跡から頭蓋骨標本が出て来て、殺人事件かと大騒ぎになったとか、卒業するときに箱にいれたまま押し入れの隅に忘れて引っ越してしまい警察から怒られたなどという話を聞いたことがあります。屍体解剖及び保存に関する法律には、「第17條(屍体に対する礼儀)屍体を解剖する者又はその全部又は一部を標本として保存する者は、屍体の取扱において特に礼儀を守らなければならない。」とありますし、大切に扱うべきものです。
私の頭蓋骨標本はアメリカの大学に勤務が決まった時に大学の後輩にあげました。持って行ってアメリカの空港で捕まったら大変な騒ぎになりそうでしたし、実家に残して間違えて母親が箱を開けたりしたらもっと大変な事になりそうだったからです。中身を教えたら預かってくれないだろうし、「絶対に開けるな」と言って預けたら、絶対に中を開けて見るに決まっています。だって母親ってそういうふうに出来ていますから。
もしかして、ハイチから来た女性は歯科医師だったのでしょうか?
その後、BBCのニュースによればこの女性はブードゥー教の儀式用として頭を持ち来んだ事が判明しました。
推理その1の「ブードゥー教の儀式用」というのが正解だったみたいです。まあ、常識的に考えればそうなんですが。local6.comのサイトもアップデートされており、頭蓋骨だけではなく髪の毛や一部の皮膚も残っており泥だらけだったようです。持ち込んだ女性は許可無く頭部をアメリカに持ち込もうとした罪、および遺体の一部や感染の危険性のある物を航空機内に持ち込んだ罪で最高15年の懲役が課せられる可能性があるそうです。
気軽に持ち歩けるお守りとは言えないようですね。
(トラックバックをしてくださった「英文 ダウジング翻訳のメモ」様のブログでその後の展開があった事を知りました。ありがとうございます。)
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