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口の中の癌

 口腔ガンは早期に発見される率が少なく、現状では他の癌より治療成績があまり良くありません。早期に発見すれば治療の成功率が劇的に上がるだけではなく、術後のQOLの低下も防ぐ事ができます。しかしながら、前ガン病変と呼ばれる癌に進行する可能性のある病変も含めて、口の中によくある口内炎などの症状にまぎれて見過ごされている場合が多いのが現状です。

 そこで、近年、簡単で苦痛の無い細胞診を用いる事によって、ごく早期のガンを発見して治療する事が可能になりました。当院でも口腔癌の細胞診を行っておりますので、気になるしこりや潰瘍がある方は早めに受診下さい。

細胞診の流れ
1. 口腔内診査
soar.jpg 通常の定期検診の場合、歯や歯茎だけではなく舌や頬の粘膜などに異常が無いかを診査します。潰瘍や正常でない粘膜の盛り上がり、白や赤の病変を見つけた場合はデジタルカメラに記録し、カルテに状態を記載します。また、触診で硬結(しこり)がないかを確認したり問診や触診、レントゲンによる検査を行う場合もあります。

2.経過観察または治療
 口腔内によく見られる口内炎や咬傷などと鑑別が難しい場合は、塗り薬を処方したりレーザーを照射したりして治療を行う場合もあります。通常、10日前後で症状が無くなる場合は癌の可能性は低いと考えられます。
3.細胞診
 診査で悪性の可能性が高いと判断されたり、治療をしても治癒が遅い場合は細胞診を行う事があります。綿棒や細いブラシを使って病変部をこすり、表面の細胞を採取します。採取した細胞は即座にガラスのプレパラートに塗布し、細胞標本を作るために固定をします。綿棒や細いブラシでこするだけですので、麻酔の必要もありませんし、切開や切除を行う必要もありません。
4.標本の作成
 採取した細胞は検査ラボに送って癌細胞を判別するための特殊な染色を行います。
5.細胞診断
 準備が終わった標本は長崎大学歯学部歯科口腔外科に送付され、病理学会の認定により顕微鏡下で細胞診断が行われます。診断結果により疑われる病名や悪性度の所見が作成されます。
6.説明
 通常1週間程度で当院に報告書が送付されてきますので、その結果についてご説明をします。
7.経過観察
 悪性の病変ではない場合でも白板症や紅板症等の前ガン病変と診断された場合は定期検診を行いフォーローアップして行きます。

 検査の費用自体は保険の適応になりますので、検査自体の負担金は約1100円程です。

 口腔ガンや前ガン病変を早期に発見するためには定期検査が重要です。患者さん本人が気がつかない非常に小さな早期のしかし「危険」な病変があるかもしれません。

 患者さんが通常の定期検診にお見えになった時、歯や歯周組織だけではなく、お口の中全体を慎重に診査するようにしています。研究報告によれば歯科医師が診査を行うと10%ほどの患者さんに白色や赤色のスポットや小さな炎症を見つける事があるそうです。ほとんどは心配がいらない種類のものですが、時として悪性や前ガン病変の場合もあります。もちろん経験を積んだ歯科医師が診査すればその多くは簡単に見分ける事が出来ますので、カルテに色や形などを記載をしてデジタル写真を撮影し経過観察をする場合も多いです。

 しかし、炎症やその他の病変の中には視診や触診だけでは悪性のものと鑑別が難しいものもあります。通常の良くありがちな炎症やのように見える場合は治療や投薬を行って経過観察をする場合もあります。いずれの場合も患者さんには今の状態についてはきちんと説明を行っていますので、かならずお願いした期間の後に診せてください。デジタル写真が残してありますので、次に来院された時にもう一度写真を撮って比較する事によって、病変の変化を容易に把握できます。

 時として無害のように見えながら原因がはっきり特定できない病変を見つける事があります。これが悪性のものではない事を確かめるために細胞診断を行う事もあります。これは病変部の細胞を綿棒で拭き取ってガラスのプレパラートの上に塗り付け、固定した上で検査機関に送って検査をしてもらいます。検査結果は1週間ほどで判ります。綿棒で拭うだけですので、ほとんど痛みはありませんが、悪性疾患の早期発見や前ガン病変の発見も可能です。

 もし、非常に悪性疾患の疑いが強い病変を見つけた場合、組織診が必要な場合があります。麻酔をした上で疑いのある組織の一部をメスで切除し、組織切片を作って診断を行います。また、大学病院の口腔外科などに紹介して診断をお願いする場合もあります。

 口腔ガンはそれほど頻度が高い疾患ではありませんが、早期に発見しないと治癒する率が低くなるので、なにか異常を見つけたらともかく早めに診せてください。

 ADA(American Dental Association)(アメリカ歯科医師会)によると口腔ガンと診断された患者さんで5年以上生存する方は半数に過ぎません。しかし、最新の診断技術を用いれば、以前よりずっと早期に口腔ガンの診断が可能になり、治せるチャンスがずっと多くなります。

口腔ガンは
  • 気づかないうちに口の中の小さな白や赤い点や腫れとして始まります
  • 舌、唇、歯茎、頬、口蓋(上顎の天井の部分)など、どこにでも出来る可能性があります
  • 他の兆候としては下記のようなものがあります。   
         
    • 容易に出血したり治らない腫れ    
    • 舌や粘膜の上の色の変化(白・赤・黒に見える場合があります)    
    • しこり、厚くなったざらざらの点、かさぶたや潰瘍    
    • 口の中の痛みやしびれ感    
    • 物が噛みずらい、飲み込みにくい、話しずらい、顎や舌が動かしにくい    
    • 噛み合わせが変わった    
    • 急に義歯が合わなくなった   
  • 喫煙は大きなリスクファクターです
  • 飲酒を伴う喫煙はリスクが非常に大きくなります
  • 過度に日光にあたると唇のガンのリスクを増やします
  • しかしながら、口腔ガンの患者さんのうち25%以上の人は非喫煙者で他のリスクファクターとも無縁です。
  • 口腔癌の好発年齢も、他領域の癌とほぼ同様の50?70歳代ですが、若い人にも発病します。
  • 性別による発現頻度は、わずかに男性に多く発症しています。飲酒・喫煙との関連が指摘されています。
  • 研究によると果物や野菜をたくさん摂るとガンの発生を予防できる可能性があります。   


 口の中にも癌が出来ることをご存知でしょうか。口の中にできる癌(ガン)口腔ガンはすべてのガンの4%ほどを占めています。日本全国では毎年1万5千人の人が発病し7千人程の人が死亡していると推定されています。しかし、一般の方のおよそ30%はお口の中にガンが出来る事をご存知ないという調査もあります。(長崎大学歯学部の調査による)日本人にもっとも多い胃がんは潜在的患者も含めると年間25万人が発症し5万人の方が亡くなっていますので、一般の方でご存知ない方がいらっしゃるのも無理は無いかもしれません。

 ADA(American Dental Association)によると口腔ガンと診断された患者さんの5年生存率は約50%です。その大きな理由は口腔ガンの7割以上が進行ガンの状態で発見される事にあります。しかし、口腔癌は、いわゆる「前ガン病変」と言われる時期が何年も続く場合もあり、比較的長い時間を経て発症する病気です。白板症、紅板症、扁平苔癬などの前ガン病変の状態で早期発見し適切に治療すれば口腔ガンの発生を防ぐ事ができると期待されます。

 また、他のガンに比べると口腔がんの治癒率は比較的良好ですが、術後の咀嚼・嚥下・発音などの機能に大きな影響を及ぼす場合があります。

癌研究会附属病院頭頚科における舌がんの各病期別の5年生存率
1期:(腫瘍の最大径2cm以下、リンパ節、遠隔転移ともに無し)
  生存率約80%
2期:(腫瘍の最大径2-4cm、リンパ節、遠隔転移ともに無し)
  生存率約70%
3期:(腫瘍の最大径4cm以上、リンパ節、遠隔転移ともに無し)
  生存率約60%
4期:(隣接組織への浸潤、リンパ節または遠隔転移)
  生存率薬30%