矯正治療
矯正治療を受けるのは成長期の子供さんたちが中心だと思われるかもしれませんが、当院で矯正治療を行なっている半数以上は成人の患者さんです。
成長期治療を行なったほうが骨の代謝が活発で歯が動きやすいのですが、歯周病などの問題がなければ大人でも歯の移動は可能です。しかし、ご自分で管理をしていただく必要がある補助的な装置の着用が確実なため、結果として治療期間に大きな差がないとする論文もあります。
また、成長期の治療では成長をコントロールして治療を行なう場合もあります。そのため、早い時期に矯正治療を始めれば上下の顎の成長のずれを補正し正常な状態にする事もできます。その反面、成長量の予測は難しい場合もあり、治療がやや長引く場合もあります。成人の矯正の場合は成長が終了していますので、逆に治療計画を立てやすいという利点もあります。
歯並びのでこぼこや上下の歯列の位置の異常があると歯周病や虫歯のリスクが高くなります。歯周病の治療や全顎的な虫歯治療を行なっても、原因となった歯並びがそのままでは再発するリスクが高くなります。
「矯正治療」と聞くと見た目の改善だけが目的のように思われる方も多いかもしれませんが、矯正治療の本来の目的は機能的に問題がある歯のポジションを治す事にあります。「磨きにくくていつも歯茎が腫れている感じがする」「食片が詰まって気持ちが悪い」「噛み合わせが悪くて顎の関節の調子が悪い」等の症状がある場合は矯正が必要かもしれません。
初診相談
最初に虫歯と現在の歯並びの状態について診査します。その状態での大体の治療の見通しや治療開始の時期などについてお話します。
経過観察
まだ、治療開始の時期ではないと判断した場合、3-4ヶ月おきの経過観察を行います。検診のたびに現在の状態と今後の見通しについて説明を行います。また、永久歯の生え変わりを見るために部分的なレントゲンを撮ったり、乳歯の抜歯などを行う事もあります。
矯正検査
歯型、顎や歯のレントゲン、写真やその他の必要な資料を集めます。後日、資料を計測したり、コンピューターで分析を行い診断をします。
診断
資料から総合的に判断した診断の結果の説明を行います。現在の問題点、治すべき部分、その方法、治療の目標、もしあるとすれば考えられる不利益などについて説明をします。また、どの時期にどのような装置を用いて、どれぐらいの期間の治療が必要かという見通しから必要な費用についての治療費用の見積もりを差し上げます。
治療開始
治療を受ける本人や保護者の方の矯正治療を受ける意志が決まれば治療を開始します。治療を開始するまでは装置に関する費用は発生しません。
* 痛み
装置を装着したり調整すると数日間、歯が浮いたような感じが出ることがあります。この間はあまり固いものは食べられません。痛みの程度としては小学校の低学年のお子さんでも耐えられる程度ですので、あまりご心配はいりません。必要な場合は鎮痛剤をお出しすることもあります。
* 口内炎
口の中の装置が頬にあたって口内炎が出来ることがあります。通常は1週間ほどで収まりますが、歯の移動によって針金が余ってきた場合は装置を調整する必要がある場合もあります。口内炎が治るまでは塗り薬や装置をカバーするやわらかいロウを使うこともあります。
* 食事
通常の食事は可能ですが、粘つくもの(チューインガム、ハイチュウなどのソフトキャンディ)や特に固いもの(おせんべい)などは装置を壊す可能性がありますので避けてください。
* 発音
装置をつけてしばらくはいくぶん、しゃべりにくいかもしれません。しばらくすると慣れてきて普通通りにお話ができるようになります。
* 虫歯
装置が入っていると歯磨きが難しくなりますので、きちんと磨けないと虫歯にかかりやすくなります。ですから、治療期間中は毎回チェックをして、歯磨きの指導を行います。また、必要な場合は担当の衛生士が装置の下のクリーニングを行い、フッ素のペーストで虫歯の予防を行います。もし、虫歯が出来ると一時的に装置を外さざるを得ない場合もあり、治療期間が長くなります。
* 楽器
フルートやトランペットのような唇で音を作る楽器は演奏しにくいかもしれません。また、クラリネットなどのリード楽器は上顎前突(出っ歯)の状態を悪くする場合もありますので、パートを変更する事が必要かもしれません。バイオリンやピアノなど、直接口で演奏しない楽器は特に問題はありません。また、音楽の授業などでリコーダーやハーモニカを吹く程度でしたら、大きな問題は無いと思います。
* スポーツ
直接、ボディコンタクトがあるような激しいスポーツ(ラグビー・空手・バスケットボール)等では直接、口の周りに打撃を受けると装置で口の中を切る可能性があります。そのため、場合によってはマウスピースなどの着用が必要になる場合があります。ただ、このようなスポーツでも小中学生のレベルでしたら特に問題になる事は無いとおもいます。その他のスポーツ(陸上、水泳など)については全く問題はありません。陸上の100mの世界記録保持者であったカール= ルイス選手が現役中に矯正治療を行っていたのは有名です。
* 友達・学校
10年ほど前までは、矯正装置を装着すると学校の先生に「このような目的で矯正装置を装着しましたので、お友達から、からかわれたりしないように、ご配慮をお願いします。」というお手紙を書いていた事もありました。最近では、矯正治療をうけるお子さんが増えてきましたので、このような心配はほとんどありません。逆に、歯並びが悪いことを理由にからかわれたり、いじめられたりして矯正治療を希望するお子さんも増えてきました。
さらに最近は装置をつけていることを楽しむために、ワイヤーを取り付けるためにカラフルなシリコンのゴムを使うこともできます。当院では常に30色ほどのゴムの中から選ぶことができます。もちろん、透明や歯の色(アイボリー)の目立たないゴムを選択することもできます。
* 装置の見た目
歯の裏側からつける装置もありますが、かなり費用がかかる上、細かい調整が困難で治療期間も余分に必要なため、適応可能な症例が限られます。外側につける装置でも、歯と同じような色のセラミックの装置を使って治療を行う事もできます。セラミックの装置だと通常の金属の装置と比べて治療期間にもあまり差はありませんし、費用もさほどは余分にかかりません。
顎の骨の中に植わっている歯を動かすためにはある程度の時間が必要です。通常、装置が入っている間は3週間から4週間に一度の通院になります。
経過観察期間中は大体3ヶ月から1年に一度の来院となります。
永久歯が生えるスペースがない場合や生える方向が悪くて生え変わりがスムースに行かない場合、乳歯を抜歯して永久歯が生えるスペースを確保することがあります。
永久歯に生え変わった時に、歯が並ぶスペースと歯の大きさの不調和が残っている場合はこれを治療するのには2つの方法が考えられます。
一つは歯が生える顎の骨のスペースを広げる方法です。矯正装置を使って歯列の幅を広げたり、奥歯をさらに奥へ移動して歯が生える場所を確保します。ただ、この方法では得られるスペースがどうしても限られるために、不調和が大きければ永久歯の本数を減らして歯を並べる方法が必要な場合もあります。もちろん、抜かずに治療を行う事が第一選択ですので、歯の本数を減らすかどうかの判断は、矯正専門医にとって非常に重要な判断です。
このような判断を下すためには専門医による矯正学的な検査と診断が必要です。
検査の内容は、
1.上下歯列の型を採って石膏模型をつくり、顎の大きさと歯の大きさの不調和の程度を数値的に把握する。
2.規格化された頭部全体のレントゲンを撮影し、これを分析する事により顎の骨の大きさや形、歯の生える方向や位置を調べる。
3.断層パノラマレントゲンを撮影し、後から生える永久歯の過不足や位置、形を確認する。
4.お口やお顔のスライド写真を撮影し、審美的な要素を検討する。
等があります。
以上の資料を元に審美性や患者さんのご主訴(気になるところ)を考慮に入れて、総合的に判定することになります。
歯を抜くことにより食物を噛む能率が落ちることを心配される方もありますが、本数がそろっていてもでこぼこでかみ合わない状態に比べ、、抜歯してしっかりかみ合うように矯正治療を行った歯列のほうが遥かに効率良く物を噛むことが出来るのは言うまでもありません。また、審美性をより高めることが出来ますし、抜いたところの隙間が残ることもありません。
抜歯すべきかどうかのボーダーラインにあったり、非抜歯での治療を強く希望される方の場合は双方の治療法によるメリット・デメリットについて十分説明と相談をおこなってから治療を開始します。