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歯科コラム

 治療終了時に患者さんから「この冠は一生保ちますか?」と聞かれたり、「前の歯医者さんが一生モノだというからこの冠をいれたのに10年でだめになった。」などというお話を御聞きすることがあります。

 高齢の患者さんを除いては一度入れた冠や詰め物が一生保つとはあまり期待できません。保険治療では厚生労働省が冠の最低の寿命を2年と設定しています。これは冠自体がだめになった場合のみではなく、歯槽膿漏や新たな虫歯でだめになった場合も含みますので、場合によっては2年でも厳しいと感じる事もあります。

 統計的には冠の平均寿命は5年程だそうです。もちろん20年以上も機能している冠もありますし、2年保たない冠もあります。また、前歯などで機能的には問題がなくても見た目が悪くなってやりなおす場合もありますし、逆に他の歯の噛み合わせや隣の歯が抜けた事によってやり直しが必要になる場合もあります。

 まず、他の人工物同様、冠をセットした時から必ず徐々に経年変化を起こすという事を忘れないでください。次に毎日のきちんとしたメインテナンス無しにはあまり長く冠を使う事はできません。

 あなたが新車を買ったとします。慣らし運転が終わって最初のオイル交換を行なったあたりがベストの状態かもしれません。でも、毎日車に乗っていれば車体も汚れます。熊本あたりだと阿蘇の火山灰や黄砂を放置するとすぐに車体に細かい傷がつきますので定期的に洗車やワックスかけが必要です。タイアの空気圧、オイルレベル、バッテリーの状態などもきちんとチェックして把握しなくてはなりません。(最近の車は割とメンテナンスフリーですけれど)

 でも、毎日の点検をきちんとしていてもそれでは十分ではありません。定期点検や車検をきちんと受けてプロのチェックがなければ安全に車を走らせることはできません。また、毎日の点検や車の使用についてもプロのアドバイスが必要になると思います。

 あなたのお口の中にも同じ事が言えます。毎日の歯磨きやフロス、歯間ブラシでの清掃をきちんと行なった上で、歯科医院での定期的な検診を行なわなくては冠の寿命を最大限に伸ばすことはできません。

 残念ながら車もどんなに大切にしていてもいつかは機械としての寿命が来ます。クラッシックカーとしてガレージに保存してたまに乗るのなら良いのですが、冠はそういう訳にはいきません。また、新しい技術によりよりメンテナンスが簡単で快適な車が開発されたように歯科も材料や技術の開発によりどんどん進歩しています。

 江戸時代なら歯が抜けたらほとんどの人はそれで終わり。入れ歯もほとんど使われていませんでした。30年前までぐらいは歯が抜けたら入れ歯。それ以外の選択肢はありませんでした。現在ならインプラントがありますので望めば固定式で噛み合わせを蘇らせる事も可能です。

 古い燃費の悪いガソリン車をハイブリッド車や電気自動車に買い替えるように、まだ使えてもより快適な生活を求めて新しい技術の商品に買い替える場合もあり得ます。ですから古い義歯や冠などを新しい歯科の技術の治療でより快適な状態にするという選択肢もあり得ます。このような場合、冠の寿命はまだあってもあえてやり直すという場合もあるのです。

 このように冠の寿命は、「毎日のお手入れ」「定期検診」によって大きく左右されますが、より快適な状態を得るためにやり直すという「戦略的なやりなおし」という可能性もあるのです。