2006年1月アーカイブ

 午前中はインプラントの2次オペでした。直径5mmのインプラントを下顎に2本植えたのですが、付着歯肉(歯冠部の近くにある固いしっかりした歯茎)が少なかったので、同時に歯肉弁根尖側移動術という名前もややこしいけど、手順もいささかややこしい術式を選択しました。

 この術式の成功の可否は歯肉への切開線のデザインにかかっています。まずはCCD方式のデジタルレントゲンで手術時のサージカルステントとインプラントの位置を撮影します。画像は即座に画面上に出ますので、ステントのマーキングの位置とインプラントの埋入位置を把握します。浸潤麻酔をしておいてステントとペリオプローブで歯肉にマーキングをしたら、もう一度よく歯肉の状態を見て切開線を頭の中に思い描きます。あとは一次手術の時の術中に撮った写真も参考になります。

 一度、決めたら切開線ができるだけ直線になるように思い切り良く、しかも浅すぎず深すぎず、メスの刃先が歯肉のどこを進んでいるかを頭の中で考えながら切開します。私は距離が正確に把握しやすいので、舌側から頬側に向かう縦切開から始める事が多いです。メスの刃先にわずかにインプラントのカバーキャップの固さと骨膜の手応えの違いを感じる事が出来ます。移動距離が大きい時は減張切開のためにやや頬側への切開線を長く取りますが、切開線を延ばすのはカバーキャップを目視してからが良いと思います。今日のオペの場合、フィクスチャーが5mmですから移動距離も大きくなります。もちろん、頤孔の位置の確認を怠ってはいけません。

 次にやや舌側寄りに歯槽頂切開を入れます。この時も切開線の真下にインプラントのカバーキャップの端が来るように考えて切開します。少し外れてカバーキャップの上を切開してしまうと付着歯肉が無駄になりますし、舌側よりにずれるとデッドスペースが出来て後の治癒が悪くなります。これもメスの刃先に神経を集中して思いっきり良く、しかも繊細に切開を入れるように心がけます。チタンのカバーキャップと骨の間に存在するわずかな溝の手応えがあります。L字型に切開線を入れた処でシャネリックのマイクロエレベーターでそっと角を剥離してみます。正方形に内接する円のように切開線の内側にカバーキャップが見えれば成功です。そのまま歯槽頂の切開線を延ばして遠心側のインプラントのカバーキャップの縁ぎりぎりを切開します。

 ここで少し歯肉を剥離すると遠心側のインプラントのカバーキャップが見えてきますので、インプラントの直径の縦切開を入れます。インプラントの直径分だけ剥離すると長方形の剥離部に内接して2つのインプラントのカバーキャップを確認します。ここで、ちょっと難易度が高いのですが、歯肉弁の骨膜を近遠心方向に切断して、そこから頬側よりは部分層弁で骨膜を骨に残したまま剥離します。こうすると縫合した時に歯肉弁の固定が簡単になります。

 ここまで準備したらテンポラリージンジャイバルカフ(カルシテックはテンポラリーアバットメントの事をこう呼びます)を連結してペリオテストでPT値を測定します。両方ともPT-5ですので良好のようです。あとはマイクロスコープを見ながら7-0の縫合糸で縫合します。書くとまたすごく長くなるのですが、これも考慮しクリアすべき点がたくさんあります。

 こう書くとすごく時間がかかるようですが、切開や剥離をしている時間はインプラント2本で10分もかかってないと思います。5分ぐらいかもしれません。ただ、切開線を決めるのにはそれ以上の時間がかかっていますし、実はマイクロスコープを見ながら縫合するのには30分以上かかります。でもトータルだと1時間ぐらいの処置です。後半の縫合をする頃には患者さんはちょっと、うとうとされていました。

 長々と書きましたが、処置中にはそんなに思い出しながら考えてやっている訳ではありません。ある程度は手が自然に動く感じです。ただ、こうやって書き出してみると、無意識のうちにいろいろな事を「意識して」処置している事に気がつきます。
 
 外科処置はなんだか楽器の演奏に似ていると思います。最初のうちはガチガチに力が入って、繊細な指の動きが出来ないのですが、練習を繰り返すとうまく「脱力」できて、しっかり弦を押さえながら早いパッセージも弾けるようになります。

 それに実は私、集中力を要求される繊細な処置というのは結構好きなんです。私は本質的に歯科医師という仕事が大好きなので集中して仕事をする事はぜんぜん苦になりません。ただ、終わったあとは10分ぐらい院長室でクタっとして、お茶を飲んで、届いたメールに返事を書いたりしてます。緊張がとけてちょっとリフレッシュしているこの時間も好きな時間です。

 もうすでに昨日ですが、診療後に一緒に勉強している先生たちと症例検討会を行いました。患者さんのデータを出して治療計画や治療後の状態について参加者で討論をしました。普段は仲が良いのですが、この時ばかりは本音で話をします。厳しい質問や白熱した議論になる事もあり、知らない人が見たら喧嘩しているのではと思うかもしれません。
 もちろん、その先生によって多少の治療のゴール設定や治療計画に違いはありますが、大きなぶれがあるようでは困ります。細部にわたって議論を詰めて行きますので、発表する側も質問する側も真剣勝負です。

 診療後、夕方7時半から会場の閉まるぎりぎり10時半までやって、それでも飽き足らずに近所のファミリーレストランに会場を移して12時近くまで話をしていました。

 仕事が大好きというより、病的な域に達しているのかもしれませんが、同じ気持ちの仲間がいて幸せです。

 朝からインプラントの2次オペでした。顎の骨の高さが無かったのでGBR(Guided Bone Regeneration)を行い、Staged Approachで骨を増やし、埋入を行なった部位です。埋入時にも骨補填剤を使ったのですが、歯肉のフラップを開いてみたら、インプラントのフィクスチャーを薄い骨が覆うほど骨が出来ていました。

 ちょうど良いぐらい骨ができていると苦労はないのですが、余分な骨の形態を整えてフィクスチャーにテンポラリーヒーリングアバットメントを連結できるようにするのにちょっと時間がかかってしまいました。もしも、骨が足りないと大変ですから、多いのにこした事はないのですが、骨を除去するときにフィクスチャーを傷つけてはいけないので、顕微鏡を見ながらの慎重な作業になります。

 最後に、メンテナンスに必要なインプラントの周囲の硬い歯茎が不足していたので、「歯肉弁根尖側移動術」という名前もややこしければ、術式もややこしい方法を使って歯茎を閉じました。治癒を良くする為に顕微鏡を見ながら細い糸で縫合しますので、これも集中力と時間が必要です。

 午前中と午後にも顕微鏡を見ながらの歯の形成と印象があったので、きょうはほぼ一日中、顕微鏡を使う処置をしていました。ちょっと目が疲れました。

 今日は9時からスタートです。眠たかったのですが、朝ご飯をしっかり食べないと調子が悪いので少し早起きして朝食を済ませて会場に向かいました。今日も実習と講義は半々でした。熊本からも多くの先生方が参加されていましたが、実は全員が知り合いの先生でした。時々、他県の先生から「熊本の先生はみんな勉強熱心ですね。」と言われる事があるのですが、本当ですね。でも、インプラント治療は日進月歩なので勉強を怠るとすぐに時代において行かれます。勉強するのは自分のためでもあり、患者さんのためでもあるんだと思います。

training.jpg真剣なまなざしで実習するI先生とA先生です。

 インプラントの研修会で福岡に来ています。昨日は学術委員会で夜の10時過ぎまで歯科医師会にいて、今朝は7時に起きてJRで福岡に来ました。丸一日、講師の先生方の講義と実習でしたので、ちょっと疲れました。今日は、博多に一泊して明日も研修会2日目です。
 インプラントは新しい治療法のようですが、本当はずいぶんと長い歴史があります。その間に少しずつ改良されて今のような信頼性のあるインプラントが用いられるようになりました。もちろん、現在もどんどん改良が進んでいますので、インプラント治療を行うにはずっと勉強を続けることが必要になります。定期的に研修会に参加していると、しょっちゅうお会いする熱心な先生方と知り合いになる事も多く、研修だけでなく情報交換も楽しみの一つです。

 診療後、歯科医師会館で学術委員会の「歯周病説明パネル」の第3校の校正を行いました。前作の「う蝕説明パネル」に引き続き第2弾です。患者さんに理解していただけるように、できるだけ分かりやすく作りました。学術委員会のメンバーで結構手間暇かけて作った自信作です。
 もしも、熊本県内の歯医者さんで、白い表紙のバインダーで虫歯や歯周病の説明をお受けになられたら感想など教えていただければうれしいです。

ホワイトニングとは

 もともと歯の色が濃かったり、年齢とともに歯の色が濃く(黄色く)なってしまう事があります。また、ある種の薬剤を服用する事により歯に濃い色の帯状の着色が残り消えない場合や、神経が死んでしまった歯が内部から変色を起こす場合もあります。

 このような場合に、歯を削って冠を被せる方法や表面だけを削って変色部分を覆う方法(ラミネートベニア)もありますが、削らずに変色した歯の着色だけを取り除く方法もありますが、歯を削らずにご自分の歯に沈着した色素を除去して歯の白さを蘇らせる方法がホワイトニング(歯の漂白)です。ホワイトニングには熟練した衛生士や歯科医師が器具を使って歯の汚れを徹底的に落とすPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)や炭酸カルシウムの微粉末を空気圧で吹き付けてこびりついた汚れを落とすプロフィジェットなどを含める場合もあります。一般的には過酸化尿素または過酸化水素のジェルを使ってエナメル質の中の着色を落とす方法を指します。
治療前
bleach_b.jpgもともとの歯の色が濃く、黄ばんだように見えます。さらに、歯の表面や裏側にステイン(汚れ)がついていて表面が茶色く変色しています。

治療後
bleach_a.jpgPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)で表面の汚れを落とした後、ホームブリーチングを行いました。オフィスブリーチングに比べ、ホームブリーチングは時間はかかりますが透明感のある自然な白さが得られやすいように思います。

 最近、自分自身の視力に自信がありません。と、言うとネットのやり過ぎで目が霞むんだろうとか、老眼か?と言われそうですが、そうではありません。肉眼で診療をする事がないからです。

健康生活の光と影に「歯科医師の視力と能力」というエントリーがありました。

歯科医もその視力が衰えるだろうと思いますが、本当に裸眼で見えているか心配です。図は歯科医の年齢構成ですが63%が既に40歳代以上、60才代が7000人ほど登録しているがよほど目には自信があるのでしょう。

 私も40歳代です。幸い?もともと近視なので老眼は進んでないのですが、最近肉眼では診療していません。最低でも3倍の拡大鏡、オールセラミックの形成や歯周外科の手術の時は歯科用の顕微鏡を使っています。熟練するまでかなり時間はかかるのですが、今では肉眼(近視の眼鏡はかけていますけど)で治療をするのは考えられません。私もいつかは老眼になると思いますが、拡大鏡や顕微鏡がある限りあまり心配していません。

 それよりも、拡大鏡が壊れた時のほうが心配なので実は拡大鏡を複数持っています。でも、愛用しているのは特注の5倍のサージテルです。他のメーカーの15万円ぐらいの安いものも持っていますが、あまり出番がありません。

 アメリカ人の大学に勤務する歯科医師の友人と話していたら、最近では歯学部の学生さんは実習に入る時に個人で拡大鏡を買わなくてはならないそうです。そう言えば、7年前に公開の映画「リーサルウェポン4」に出て来た歯医者さんは拡大鏡を欠けて診療していましたね。日本でもここ10年以内には絶対に一般的になると思います。

 向かいの熊本赤十字病院の建物が新しくなってから、ちょっとテレビの映りが悪くなってしまったので、待合室にケーブルテレビを入れました。お母さんの治療を待つ子供たちは、結構、アニメ専用チャンネルに釘付けです。隣の県立大学の学生さんはMTVのチャンネルをよく見ているようです。待合室のテレビの上にチャンネルガイドがありますので、お好きなチャンネルをご覧ください。チャンネルを変えるときには他の患者さんがいらっしゃいましたら、一声おかけくださいますようお願いいたします。

 セラミックインレーは金属の詰め物の代りにセラミックでできた詰め物を接着します。金属の詰めものと違い、歯の色を再現できますので、治療の跡が残りません。また、セラミックは体に優しい材料ですので、金属のイオンが溶け出して歯が着色したり、アレルギーの原因となる事もありません。
治療前の状態
metal.jpg奥歯に金属の詰め物がしてあります。金属の縁が欠けたりして虫歯になっていました。人と接する職業の患者さんでしたので、特に金属の色が気になってうまく笑えませんでした。

セラミックインレーでの治療後
gradia.jpg金属の詰め物を順番にすべて除去し、虫歯の治療をおこなってセラミックインレーで治療を行いました。普通に大きく口を開けて笑っても金属の色は全く見えません。自然な笑顔が戻りました。

grp0116224302.jpg 医院の新年会で天一に行って天麩羅を食べてきました。スタッフの人数が多くなるとそれぞれの好みがあって、皆が好きな食べ物というのは難しいのですが、天麩羅が嫌いなスタッフはいません。カウンターに並んで、お揃いの天一のエプロンをかけてもらって食べました。

 一流のお店のサービスを体験して、患者さんへの接遇に生かして欲しいというのが実は院長の趣旨なのです。院長の希望はともかく、美味しい物は美味しいという事でみんなでたくさん食べました。

 揚げたての天麩羅は衣がさくさくしていて、どれもとても美味しかったです。意外にもスタッフの一番人気は「丸十」サツマイモの天麩羅です。祖母が昔、秋の女性の楽しみは「芋栗南瓜」だと言っていたのを思い出します。揚げ方の職人さんがサツマイモを切るのを見ていると、甘みがあって美味しい真ん中の1/3だけを使って、繊維が多い両端は使いません。衣はさくさく、中のお芋はほっこりして自然の甘みが広がります。

 「もう、お腹いっぱい」と言いながらも、最後に天茶(小エビのかき揚げを乗せたお茶づけ)とデザートを食べて大満足で帰ってきました。

治療前
metalbonds.jpg治療前の状態です。20年以上前に前歯4本をメタルボンド冠で治療してあります。おそらく、当時としては最高の材料と技術で丁寧に作った冠だと思いますが、長い年月を経て冠の縁が欠けてしまったり、周囲の歯の変色で周囲の歯と色が合わなくなってしまいました。

治療後
allcerams.jpg メタルボンド冠を外してオールセラミック冠で修復しました。変色していた周囲の歯は漂白(ブリーチング)をしています。漂白した歯の色に合わせて4本の前歯を作り直しました。セラミックは生体への為害作用が少ないので周囲の天然歯と比べても自然な感じが得られています。

 向かって左側の一番前の歯だけは神経が残っていましたが、他の歯は神経を取って詰め直して、金属の土台が入っていました。そのため、長い間に土台に使われていた金属のイオンが溶け出し、歯の根自体が黒く変色していました。それでも治療後は金属のコーピングが無くなったため光の透過が遮られず、黒ずみは患者さんご自身は気にならない程度になりました。
 今なら、黒ずみの原因となる金属の土台は使わずにセラミックやファイバーグラスと樹脂の土台を用いて黒ずみを防ぐのですが、残念ながら20年前にはまだ無かった材料です。

 今日から新学期、冬休みが終わって一安心と、思うと大違いです。始業式の日は午前中で学校が終わりですので、午後は帰ってきます。塾もまだ通常授業でないところのほうが多いので、午後から定期検診や矯正治療の子供たちが多いのです。
 特に注意が必要なのは奥に新しく生えて来た歯です。磨き残しがないか、虫歯になっていないかしっかりとチェックをします。定期検診の間でも新しく歯が生え始めたら、ぜひ一度見せてください。奥は意外と気がつかないうちに虫歯になってしまう事が多いので特にチェックが必要です。

 最近、TVなどで3Mix-MP法について取り上げられているようです。「痛みがない」とか「一回で治療が終了」とか良い事ばかりのようですが、本当でしょうか。

 TVにも取り上げられていたタクシゲ先生が管理されている3Mix-MP法のHPを見てみました。
 
 3Mix-MPの「科学的根拠」のページには英文の論文が並んでいますが、タイトルをよく読むとすべてin vitroの実験です。in vitroとは「ガラス(試験管)の中で」という意味で、動物実験(in vivo)ではありません。「臨床論文」で掲載雑誌として挙げられているのは、「歯界展望」「The Quintessence」「日本歯科評論雑誌」などです。これはいわゆる「商業誌」と言われるもので「学会誌」ではありません。これを3Mix-MPの「臨床論文」「科学的根拠」と言うには少し根拠が弱いように思います。
  どのような薬でも基礎研究(in vitoroの研究)、非臨床研究(実験動物での研究)、3フェーズの治験(健康な人での安全性試験、患者さんによる効き目と安全性の試験)を行った上で一般に用いられます。この段階で言えば3Mix-MPはまだ基礎研究の段階であるように思います。

 もちろん、3Mix-MP法で使われるそれぞれの薬はそれぞれに治験を済ませてはいますが、3剤を併用する事による未知の相互作用については検証がなされていません。混合される薬剤の数が増えれば増える程、相互作用が生じて副作用が起こる可能性が高いという論文もあります。厚生労働省の基準においても、本来は3Mix-MPとして調剤をした状態での治験が必要であると思います。

 たとえ、治験が終了しても「健康保険適応になるかどうか」という問題があります。もちろんそれぞれの薬剤は個々に別々の用途で保険の適応があります。ただし、3Mix-MPの3種類の中に「虫歯の治療で歯につめる」適応がある薬はありません。現在のところ、保険適応外の用途で薬剤を使った場合、治療の最後(冠を被せたり、詰め直したり)まで、保険外で治療を行う必要があるというのが厚生労働省の見解のようです。

 3Mix-MP法についてはきちんと検証を行えばその有効性と安全性が確認されるかもしれません。しかし、現状では、有効性と安全性が確認されているとは言い難い上、他に代替の治療手段があるので、患者さんに対して積極的に3Mix-MP法を使用する意義を見いだす事は出来ないと思います。また、上記の説明無しに使用するのであれば、歯科医師としての倫理上の問題があるとも思います。

 最後に、3Mix法はもともと新潟大学の教授を退官された岩久正明先生が開発された方法であり、岩久先生の歯科医院のHPにくわしいコメントがあります。


最近、3MIX?MP法の開発者と称して盛んに宣伝されている東北の開業医の先生は、3MIXの研究には全く関係ない方で、たまたま私の講演を聴いて、3MIXを混ぜる材料MP(特別なものではありません)の名前を付けて開発者と称して居られるだけで学術的研究報告もありません。

 患者さんも歯科医師のみなさんもセンセーショナルな宣伝に踊らされず、冷静なご判断をお願いします。

 90歳近い患者さんがお見えになりました。寒い中、お一人でタクシーに乗ってこられましたし、待合室から診療室への足取りもしっかりとされていました。本当のお年を知らなければ、もうすぐ90歳になられるとはとても見えません。

 お口の中を拝見すると、永久歯28本のうち27本が残っていました。歯を支える骨がやや吸収していますが、お年を考えるとほぼ正常な状態と言えます。着色やひび割れ、すり減ったところなどはありますが、虫歯はありません。
 歯周病ではないかが気になられて受診されたのですが、あまり大きな問題はありませんでした。検査をして説明をし、歯磨きの練習をしていただき、次回に歯石の除去の予約をお取りしました。

 この患者さんが今まで歯を失わないですんだのは何故だったのか考えてみました。一番大きな要因は咬合(噛み合わせ)だと思います。歯科矯正学では正常咬合という概念があります。いくつかの条件があるのですが、この患者さんはその条件に照らし合わせてもほぼ完全に正常咬合でした。

 上下の糸切り歯は長い根を持っています。この長い根で歯ぎしりをして横に顎をずらした時の力をしっかり受け止めて奥歯に無理な力が加わるのを防いでくれます。奥歯は比較的に太い根を持っています。細い前歯に噛み締めた時の力が加わらないようにしっかりと支えてくれます。上下の歯の噛み合わせは必ず歯の幅半分づつずれています。このため横へずらすと上顎の歯と歯の間を下顎の歯の尖った部分がうまく通り抜けてスムーズに顎が動きます。
 これらの、どの機能が欠けてもどこかに問題が起きてきます。ところが、矯正治療後の方を除けば、世の中には正常咬合の方のほうが少ないのです。もちろん、すべての正常咬合でない方にすぐに問題がおこる訳ではないのですが、40歳代以降になるとどこかに問題が起き始め、歯を失う原因となる事が多いのです。

 歯学部を卒業して、大学院に入学し、歯科矯正学を専門的に勉強し始めた頃、このような事は頭では理解していましたが、実際に90歳近い患者さんを診る機会はありませんでしたので、それがどのような結果となるかが分かりませんでした。逆に噛み合せの状態が悪く、40歳代で奥歯を順番に失って行く患者さんもいらっしゃいます。このような患者さんは早く矯正治療をしていれば歯を失わずに済んだかもしれません。

 総入れ歯の方はご自分の歯で噛まれる方に比べ、数倍寝たきりの方が多いという調査があります。もしかして、この患者さんがお元気なのも、ほとんどご自分の歯が残っていてなんでもしっかり噛めるからかもしれません。そう考えてみると、見た目をきれいにすることが重視される事が多い矯正治療ですが、生涯にわたっての健康を維持するのにも役立つのかもしれません。

 お正月休みも終わって、すでに通常診療に戻っていますが、子供たちは冬休み真っ最中です。通常の定期検診や矯正の定期検診の子供たちに加え、年に2回の検診スケジュールの大学生、結婚されて遠くにお住まいなのに里帰りのついでに検診に来てくださる患者さん等々、歯を削っている暇もありません。これはこれで、幸せな事なんですが、、、

 久しぶりに診る子供たちはみんな成長しています。背が急に高くなったり、声変わりしていたり、にきびなんか作っている子もいます。この間まで幼稚園だったのになんて思いますが、その分、私は確実に年をとっています。小さな子供たちも、去年までは椅子に座るだけで大騒ぎだった子が、今年は弟ができてお兄ちゃんだからと必死に我慢してたりします。泣いていた子が泣かずに口の中を見せてくれるようになります。スタッフみんなで「すごい!」と褒めると照れてました。

 写真を撮って、レントゲンを撮って、虫歯と噛み合わせと歯茎のチェックをして、説明をして、というのを一日繰り返しています。だんだん、選挙戦の最後の候補者みたいに声が枯れてきます。シュガーレスのど飴を舐めてがんばっています。冬休みもあと数日ですのでもうひとがんばりです。

 本日より通常の診療を行っております。年末・年始の休診中はごめいわくをおかけしました。
今年もよろしくお願いいたします。
 尚、1月21日(土)は研修会出席のため院長が不在です。一部、診療内容・予約人数に制限がありますのでご了承願います。

効果
ロキソン(薬剤名:ロキソプロフェンナトリウム)は、痛みを止めたり、腫れを引かせたり、熱を下げるお薬です。特に痛み止めの作用が強力です。またプロドラッグという種類に属し、胃腸で吸収されてから効果を及ぼす物質に変換されて作用しますので、胃腸への障害が起こりにくいという特徴があります。

作用機序
 プロスタグランジンという痛みや腫れを生じる物質が体の中で合成されるのを抑制します。服用後、胃粘膜刺激作用の弱い未変化体のまま胃腸から吸収され、その後速やかにプロスタグランジン生合成抑制作用の強い活性代謝物trans-OH体(SRS配位)に変換されて作用します。

用法・用量
 「痛い時に飲んでください」と指示があった場合は、指示に従って1回1-2錠を服用してください。毎食後服用の場合は1回1錠を服用してください。なお、年齢、症状により適宜増減する場合がありますので、指示された用量をご確認ください。また、できるだけ空腹時の服用は避けてください。服用前に軽食を摂るかコップ1杯の多めの水か牛乳で服用してください。

禁忌(飲んではいけない方)

 ○消化性潰瘍のある方
 プロスタグランジン生合成抑制により、胃の血流量が減少し消化性潰瘍が悪化することがあります。

 ○重度の血液の異常のある方
 血小板機能障害を起こし、悪化するおそれがあります。

 ○重い肝障害のある方
 副作用として肝障害が報告されており、悪化するおそれがあります。

 ○重い腎障害のある方
 急性腎不全、ネフローゼ症候群等の副作用を発現することがあります。

 ○重い心機能不全のある方
 腎臓のプロスタグランジン生合成抑制により浮腫、循環体液量の増加が起こり、
 心臓の仕事量が増加するため症状を悪化させるおそれがあります。

 ○ロキソニン錠の成分に過敏症の既往歴のある方

 ○アスピリン喘息の既往のある方
 アスピリン喘息発作を誘発することがあります。

 ○妊娠末期の方
 陣痛を弱めることがあります。

服用上注意すべき方

○高齢者の方
 高齢者では、副作用があらわれやすいので、少量から開始する場合もあります。また、副作用がないか常に体の状態にご注意ください。(これはどの薬でも同じです)

○妊娠中または授乳中の方
 妊婦又は妊娠している可能性のある方には治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ服用していただきます。特に、妊娠末期の方は服用しないでください。体の中で陣痛を起こす物質(プロスタグランディン)の合成を阻害しますので、分娩が遅延する可能性があります。また、母乳への移行が確認されていますので、授乳中の方は服用しないでください。やむをえず服用する場合には、授乳一時的にを中止していただきます。

○新生児、乳児、幼児又は小児
 絶対に服用させないでください。ごくまれですが、重篤な副作用が起こる可能性があります。

相互作用のある薬
 ○ワルファリン(抗凝固剤:血液をサラサラにする薬)ー効きすぎる可能性があります。

 ○トルブタミド(血糖降下剤:糖尿病の薬)ー効きすぎる可能性があります。

 ○ニューキノロン系抗菌剤(ばい菌をやっつける薬)痙攣をおこす可能性があります。

 ○メトトレキサート(リュウマチの薬)ー効きすぎる可能性があります。

 ○炭酸リチウム(精神安定剤)ー中毒を起こす可能性があります。

 ○チアジド系利尿薬(利尿・高圧剤)ー効き目が悪くなる可能性があります。

 当院でお薬を差し上げた場合は「薬剤情報」という紙を差し上げています。この紙にはそれぞれのお薬の外見、名前、効能、用法、副作用などについての説明しています。この紙はよくお読みになって、お分かりにならない場合を電話で結構ですので、お尋ねください。また、お薬を飲み終わってしばらくは保管をしておいてください。

 もし、服用中または服用後数週間以内に内科等、他科の医療機関を受診される場合は必ずお持ちになってください。他科の先生が投薬をされる上でのご参考になると思います。

 「ペットのためのデンタルケアー」のエントリーは私の友人のアメリカ人からもらった獣医さんのパンフレットの一部を抜粋して翻訳したものです。あなたはこの文章を読んでどう思われますか?ペットにここまでやるのは馬鹿げていると思われますか?少なくとも飼い犬の75%は歯科疾患を抱えているという研究もあるようですので、アメリカ人にとっては真面目な問題のようです。また、歯科医師としてこの文章を読んでみると動物も人間も歯周病の原因は同じであることが分かります。

 少なくとも、うちの犬、マシュマロ(ウェルシュコーギー)にはほぼ毎日歯磨きをしてやっています。ペット用の歯磨き剤や歯ブラシもあるのですが、人間用の歯ブラシ(やや硬めでヘッドの小さな子供用)とフッ素配合のキシリトール入り子供用歯磨き剤を使っています。歯磨き剤は人間用のものを使うと全量を飲み込んでしまうペットの場合はお腹をこわすこともあるようですので量には気をつけてください。フッ素入りの歯磨き剤を使うことは虫歯を予防しプラークの形成を遅らせるのに効果がありますのでぜひフッ素入りを使ってください。また、甘みがある子供用を使い最初に少し舐めさせてから歯磨きの練習を始めました。うちのマシュマロはライオンのチェックアップ子供用(歯科医院専売ですが)を使っています。これは、フッ素配合で、低発泡性で刺激がすくなく、飲み込んでも危険性がない成分を配合してあって、しかもキシリトールで甘みがあります。味は好き嫌いがあるかもしれません。

 実は、私の悩みは他にあります。アメリカで獣医さんにペットの歯石を取って貰うとだいたい$100(1$=120円だと12000円)ほどかかります。結構、費用がかかりますね。さらに、人間がアメリカで歯医者さんに歯石を取ってもらうと、初診料や検査料でだいたい$400(保険の歯科特約が無い場合。日本円で48000円)ぐらいは必要になります。ずいぶんと高額です。一方、日本の健康保険制度は医療を受ける側からすると非常に恵まれた制度です。保険に加入していれば人間が歯石を取ってもらって歯磨きの指導を受けても3割負担で3000円ほどしかかかりません。(初診料や検査料、指導料を含みます)こんなに安く、安心して医療を受けられる国は(現在のところ)他にはありません。ところが、多くの患者さんが定期的なチェックにおいでにならずに、残せる筈の歯を失っているのです。お金の問題ではないのかもしれませんが、本当にもったいないですよね。

 歯ブラシの毛はプラークが溜まりやすい歯茎の下や歯と歯の間の隙間にとどくように作られています。ガーゼのパットやスポンジ、コットンボールなどを使えば歯肉縁上のプラークを取り除く事ができますが歯肉縁下のプラークは取り除けません。

 大きな口の犬のための特製のブラシや小さな猫用のブラシがあります。それぞれのペットのためには「ペット専用」の歯ブラシを用意してあげてください。ペットと飼い主が歯ブラ シを共用すると、ばい菌の相互感染を起こす可能性があります。

 では実際に歯ブラシと歯磨き剤を使ってみましょう。あなたのペットがブラッシングを嫌がるようであれば話しかけて安心させておいて後でもう一度試してみましょ う。少しずつ進歩するようにして、いきなり完璧を求めないであげてください。良く出来たらすぐにご褒美をあげるか、一緒に遊んであげましょう。時間をか けてください。それぞれのペットには個性があります。一週間で慣れる子もいれば一か月以上かかる子もいます。ご褒美はラーニングカーブ(学習曲線)向上の助けになります。

04_05.jpg まず、歯ブラシをあてる正しい毛先の角度は歯茎に対して45度です。小さく円を描くように歯の外側を磨きます。必ず歯茎のラインより下に毛先が当たっていることを確認して下さい。歯の内側(舌や口蓋の側)を磨く事はそれほど重要ではありません。人間とちがって犬や猫では内側に歯石が付くことはあまりありません。


 歯ぐきの溝を清潔な状態に保つことが一番重要です。毎日のホームケアで歯肉縁下のプラークと歯石を歯肉溝から取り除かなくてはなりません。飲み水にフッ素剤を加えたり練り歯磨きをしみ込ませた布で歯を磨くのもホームケアの助けになるかもしれません。しかし、歯周病は歯茎の溝から始まるのを理解しなくてはなりません。歯磨き粉で歯茎の下を掃除してこそ最も効果的なホームケアと言えます。


 歯磨きは健康なお口の状態ではじめましょう。歯茎に問題があると痛みを生じ、「非協力的な患者」を作ってしまいます。歯茎の問題を最初に治療しなくてはなりません。

以下の文章はアメリカの獣医さんのパンフレットの翻訳です。
当院ではペットの歯科治療は行っておりませんので、悪しからずご了承ください。

 ペットの歯科治療を終了する前に、お口の中の状態を維持し向上させるための方法についてお話する必要があります。 ホームケアはお口の健康を守るための最も重要な手段です。日常のブラッシングをきちんと行えば歯のクリーニングのために来院する間隔を劇的にのばす ことができます。

18_09.jpg
 プラークは常に形成され、口の中に溜まっていきます。朝起きた時に口臭があるのはプラークが口の中に溜まっているからです。適切な口腔ケアを行えばプラークの形成をコントロールする事ができます。みなさんは一日に数回はプラークを除去するためにブラッシングをしますよね?

どうしてペット にはブラッシングが必要無いという事があるのでしょうか?

 デンタルホームケアのゴールはプラークが石灰化する前に歯の表面や歯茎の間の溝から取り除く事にあります。これがうまくできるかどうかは飼い主がど れだけペットの歯磨きができるかだけではなく、ペットの協力度にもかかっています。お口の中を清潔な状態に保つためには歯ブラシの毛先を歯茎の上で上下 に動かすという機械的な清掃が必要なのです。

 ホームケアは永久歯が生えはじめる前に始めるのがベストです。ホームケアを始めるパーフェクトなタイミングは子犬や子猫が初めてお家にやってきた時です。獣医さんの指導の後、毎日のブラッシングを続ける事によって獣医さんと飼い主の絆とおなじように飼い主とペットの絆も強くなるのです。


 飼い主の方から「固い食べ物は歯磨きの替わりになりますか?」という質問をよく受けます。また、犬や猫が固いフードやビスケットを食べると歯石が壊れて歯がきれいになると信じている人がいますがこれは間違いです。実際は柔らかいものを食べているペットのほうが固いドライフードを食べているペットより歯石が付きやすいというだけです。歯の表面のすべてを清潔な状態に保つ唯一の方法は毎日のブラッシングだけです。

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